2016年4月24日日曜日

理研で液侵型スーパーコンピューターShoubu(菖蒲)を見てきた




2016年4月23日に理化学研究所和光地区の一般公開があったので、そこで見たスーパーコンピューターShoubu(菖蒲)について紹介したいと思います。

珍しい液侵冷却を採用

フロリナートに浸されるShoubuの基盤
基盤がフロリナートに浸されている
一般的にパソコンの冷却と言えば、ファンで送風して冷やす空冷が一般的です。スーパーコンピューターShoubuは液侵冷却という特殊な冷却を行っています。簡単に言えばパソコンを丸々液体の中に沈めてしまうということです。普通そんなことをすればパソコンは壊れてしまいますが、液体に「フロリナート」という絶縁性の高い液体を使うことでクリアしています。

Shobuに実装されている基盤
これの何が良いかと言いますと、まずは密度を高めることが出来ることです。空冷の場合は空気を使う制約上、容積あたりのサーバーラックの密度には限界があります。液侵冷却を採用することで空気を越える高効率で冷却することが出来、サーバーの密度を高めることが出来ます。

次のメリットは専用のサーバールームを構築しなくて済む点です。サーバーはサーバー自体を冷やすたまに冷房をガンガン効かせることの出来るサーバールームを作り、その中にサーバーを置くという非効率的なことをしています。Shoubuでは液体で冷却するため、温まった冷媒を配管で外まで送り、外の熱交換器で直接冷却することが出来ます。そのため効率的な冷却を可能としています。

スーパーコンピューターShoubu菖蒲のラック
Shoubuのタンク
100Lほどのフロリナートが充填されている
デメリットとしては冷媒として利用しているフロリナートが非常に高いということです。理研では1Lあたり一万円以上で購入している言っていましたが、そのフロリナートを一つのサーバーラックあたり100Lも使うことです。それでも高密度に配置できることや高効率で冷却することで、サーバー数を減らしたり電気代を削減することできたり、フロリナートの揮発性が低く頻繁に補充する必要はないとのことで、空冷と比べると元がとれるという話でした。ちなみにこのフロリナートは人体への影響は少ない物質とのことです。実際に私も触ってみましたが、少しヌルっとした液体という程度で刺激などは感じませんでした。

演算部には独自チップ採用

Shoubu仕様表
Shoubu仕様表
Shoubuのノードは「intel Xeon E5-2618V3」1つを中心に、一枚あたり1024コアを搭載する特殊チップ「PEZY-SC」4つで構成されています。

Shoubuのブリック
ブリック
このノードが4つ集まることでブリックという単位になり、そのブリックが銀色のタンク一つあたり16枚沈められています。

ここで肝になるのは「PEZY-SC」というチップです。このチップはMIMDと呼ばれるタイプの物で、「PEZY-SC」の場合は比較的な中身が単純な構成のチップを1024個搭載し並列処理を行うというものです。この特殊なチップと液侵冷却という効率的な冷却で、スーパーコンピューターのエネルギー効率を競うGreen500で1位を獲得しています。

用途としては画像処理などのGPUが担っているような分野が得意のようです。

汎用性に欠けるShoubu

ここまででShoubuが非常に優れたスーパーコンピューターであることが分かっていただけたと思いますが、Shoubuには大きな弱点があります。それは汎用性の無さです。

「PEZY-SC」は簡単な計算を複数同時に行う並列処理は確かに得意ですが、複雑な一つの計算を行うという点ではあまり強くありません。さらに「PEZY-SC」は日本のベンチャー企業「PEZY Computing(ペジーコンピューティング)」が独自に開発したため、一般的なパソコンで使うようなプログラムを動かすことが出来ません。なので、プログラムを書く難易度も高めといえると思います。そのためか、理研でどのような用途向けかを聞いたときも若干歯切れが悪かったように感じます。



「PEZY-SC」の一世代前にあたる「PEZY-1」はポータブル超音波装置に搭載されている実績があるようですが、そいった高付加価値をつけられる分野でしっかり地位を固めていけるかが、今後の発展に関わってきそうです。

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