日本最強動物ヒグマ
ヒグマの亜種 エゾヒグマ |
ヒグマはユーラシア大陸や北米大陸に住む大型のクマです。ヒグマは広い地域に住んでいるため、沢山の亜種が存在します。ハイイログマ(グリズリー)やエゾヒグマと呼ばれる有名なクマも、ヒグマの亜種という位置づけになります。けものフレンズのアプリ版ではヒグマの他、エゾヒグマ・ハイイログマ・ゴディアックヒグマ・カムチャッカオオヒグマなどが登場しています。
今回は長くなるので最初に簡単な説明をすると、ヒグマは他の動物にはない凄い冬眠能力を持つ生き物です。大きな体を維持するため、沢山の餌を必要とします。そして大きな体で動物の中でも最強クラスの強さを持つ中、人などに対しては臆病な反応をする繊細さも持ちます。そんなヒグマについて日本に住むエゾヒグマ生態を中心とし、紹介をしていきたいと思います。
冬眠してもへっちゃら?
暖かいところに住む マレーグマ |
クマと言えば冬眠です。ヒグマに限らずクマの冬眠能力は、とてもすごい能力です。マレーグマなど暖かいところに住んでいるクマは冬眠しませんが、ある程度の寒くなるとろころに住むヒグマやツキノワグマは冬眠します。ホッキョクグマ(シロクマ)は変則的で、子供を産む母グマだけが冬眠します。
この時凄いことの一つ目として、体力的な低下は最低限ということです。人間の場合、ずっと寝ているとたんぱく質が分解されて筋力が落ちたり、カルシウムが血中に流失し骨密度が低下します。しかし、クマの場合脂肪が消費される以外は、殆どそういったことが起こりません。さらに骨密度の低下は、加齢によって起こることもあまりないとされています。この仕組みをよく理解できれば、人間の健康維持にとっても大きな意味を持ちます。高齢化社会を迎える人類にとっては、特に重要です。
冬眠時は脂肪以外はほとんど消費することはないと説明しましたが、この消費の仕方もとても上手なものとなっています。脂肪を分解しエネルギーに変える時に水分が発生しますが、その水分を上手く利用することで飲み水を不要としていると考えられています。食べたら排泄が必要ですが、こちらも上手い仕組みがあります。体内で発生した尿素を窒素源として再利用してアミノ酸を合成し、ゴミとなるアンモニアを最小限に抑えているのです。これほど上手いシステムを体に備えてはいますが、それでも冬ごもりの時には非常に大きなエネルギーを必要としています。
とにかく食べまくれ
メスのヒグマは1.8~2.5mで体重100~300kg、オスが2.5~3mで250~500kgほど、エゾヒグマは少し小さくなってメスが1.6~1.8mで体重が150~160kg、オスが1.9~2.3mで120~250kgなどと言われています。ヒグマはとても大きく、エゾヒグマでニホンツキノワグマの二倍ほどとなります。これだけ大型の動物は日本では他に存在せず、日本最強の動物と言えます。体が大きくなると食べ物が沢山必要になります。更にクマ特有の問題として、冬眠に向けて脂肪を蓄えることも必要です。こういった事情からクマは沢山食べる必要があり、冬眠するクマは特に沢山食べる必要があります。
ヒグマは常に沢山の物を食べるのですが、困ったことが一つあります。ヒグマの先祖はもともと肉食動物なので、植物などは効率的に摂取できるとは言えません。しかし、動物だけを狙って食べるのは大変で、えり好みもできず雑食でいろいろ食べるしかありません。そこで常にその時旬で栄養価の高いものを食べて、吸収率の悪さは栄養価で補う戦略をとっています。春に目が覚めた時はまだ食べ物が少ないので、越冬に失敗したシカやなどを食べます。次に新緑の季節になれば新芽などを食べ、虫が活発になるようになればアリやハチなどでたんぱく質を摂取します。夏に入り畑に様々なものが実ってくればそれを失敬し、秋で果物や木の実が実ればそれを食べます。こういった形で常にその季節の最高のものを出来るだけ食べています。
ヒグマと言えば木彫りのクマです。サケを咥えた姿は、長い間北海道のお土産として不動の地位を誇っていました。しかし、あれはあまり正しくありません。アラスカなどのヒグマは冬に向けて遡上するサケをバクバク食べますが、エゾヒグマはあまり食べません。理由としては北海道といえど河川改修があちこちで行われ、サケが山奥まで遡上できないこと、今もサケの遡上が沢山見られる海辺に近い河口部は人が多くヒグマとしてはあまり行きたくない場所という理由です。そのためエゾヒグマはサケを食べたいと思っているものの、食べることが出来ない状況が続いていました。しかし、クマを見たらとにかく追い払うなどを止めた知床などでは、河口でサケを食べるクマが見られるようになっているそうです。サケは海から森や森の動物たちに恵みをもたらす存在です。日本は自然災害も多く河川改修は必要なので、全て止めるのは出来ません。しかし、サケの遡上は生態系で非常に重要なので、最低限に留めるよう注意が必要です。
サケとクマの関係で面白い話があります。それは食物の中でサケの依存度が高い地域のクマは、白いクマが見られるようになるという物です。カナダのグリブル島ではツキノワグマに近いクロクマという種類の白色個体、スピリットべアというのが見られます。この島では島に住むクマの半分が白色で、半分が普通の黒です。択捉島のヒグマも、白色個体が一部生息しています。これらはサケを川で狩るとき、体色が白いほうが魚から見た時に空と一体化し狩りの成功率が高いため、サケに依存度の高い地域では白い個体が生き残ったとされています。
※参考文献
門崎允昭 「北海道におけるヒグマの食性」、総合地球環境研究所・北海道大学 (2016) 「択捉島のヒグマはサケに強く依存した食生活」
ヒグマの頭の良さと人間
木をひっくり返す様子 ちょっとしたものなら凄まじいパワーでひっくり返します |
ヒグマは縄張りを持ちません。個体ごとに性格や傾向はあり、山奥から出ないものや人里近くで生きるものなどといったものはあります。しかし、ここからここは自分縄張り!のようなことはせず、必要とあらば遠くまで旅に出ることもあります。先ほど説明したように様々な食べ物を沢山必要とするので、縄張り自体が現実的な選択肢ではないのかもしれません。また、若いオスに限っては生息地を広げるためか、遠い場所まで移動する本能のような傾向もあるとされています。
必要とあれば様々な場所へ行くこと、常に沢山の食べ物を必要とすることで困ったことがおきます。トウモロコシ畑のような最高の餌場があればそれを利用しない手はありませんし、人間の残した残飯なども楽して手に入れることが出来るごちそうです。そうした理由から「人里=最高の餌場」と認識してしまうと、足しげく通うようになってしまいます。こうならないようにするため、農場と林や茂みの間に草刈りをして見晴らしのよい緩衝地を作り警戒心の高いクマを畑に近づきにくくしたり、ゴミの管理を徹底するなどが必要なのです。さらにクマは非常に学習能力の高い動物です。良い餌場だと判断すればどんどん利用する反面、爆竹などで驚かされて恐ろしい場所だと認識すればやってきません。もともと繊細な面を持つ動物なので、様々な方法で人里は恐ろしい場所と認識させればかなり効果的です。本能ではなく学習なので、継続してクマへの対応にあたることも重要です。ただ、ヒグマは個性豊かな面もあります。その個性として、すぐに人は恐ろしい動物だと認識する個体もいれば、何度やっても恐れをなさず人里に降りてきてしまう個体がいるのも事実です。
北海道特有の問題としては、ヒグマの生息数とシカの問題があります。世界的に見ればクマ全体が、生息地の破壊や害獣としての駆除で減少傾向にあります。北海道も決して増えているとは言えませんが、世界的に見ると非常に高い密度でヒグマが生息する場所です。どんなに注意していてもヒグマが人里に降りてきたり、山で突然であってしまうことが起きてしまいます。
もう一つの問題としてシカの問題があります。北海道ではシカが増えすぎて駆除が行われています。駆除された個体全てを持ち帰ることが出来れば良いのですが、現実的には難しいことです。その場に残されたシカをクマはごちそうとして利用します。サケの遡上が難しくなったいまでは、最高のタンパク源と言えるでしょう。少しだったらさほど問題ないのですが、沢山放置されることで冬眠を止める個体すら出てきている状況です。なかなか難しい問題ですが、対応の方法を変える必要に迫られています。
※参考文献
編集 坪田敏夫・山崎晃司 (2011) 『日本のクマ―ヒグマとツキノワグマの生物学』 東京大学出版、岩井基樹 (2010) 『熊のことは、熊に訊け。 ヒトが変えた現代のクマ』 つり人社
「日本のクマ」は硬い本ですが、非常に勉強になるのでお勧めです。これを読めばエゾヒグマとツキノワグマについての概要は、今ある書籍の中ではかなり正確に把握できるのできると思います。「熊のことは、熊に訊け。」は癖がありよく判断しながら読む必要を感じますが、こちらも一読の価値はあると思います。
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チームワークのリカオン
リカオン |
アフリカのサバンナに住む動物で、環境破壊や伝染病のジステンパーで数を減らし絶滅危機種となっています。日本の動物園ではズーラシアでしか見ることが出来ません。
ブチハイエナ |
リカオンは食肉目イヌ科リカオン属の動物です。ハイエナは4種いますが、日本の動物園にいるのはだいたいブチハイエナです。ブチハイエナとリカオンの写真を見比べて頂くと分かると思いますが、体型は結構違います。ハイエナに模様は似ていますが体型はハイエナのほうがぽっちゃりしていて、リカオンはやっぱり犬っぽい体型をしています。
オオカミっぽい習性だけど…
イヌ科なのでオオカミのような群れを作ります。オオカミ同様に群れのトップはつがいで、その下に各メンバーが付きます。オスのほうが多いことが多く、最大でメスの二倍程度のオスが居ます。普段は群れで放浪しますが、子育ての時だけ巣穴をつくり留まります。トップのつがいだけが子供を産み、子育ては群れのみんなで行います。また、メスは母性本能が強く、各メス同士で子育てする子供をめぐり争うほどです。巣穴や子育ての仕方はオオカミと似ていますね。
逆にオオカミと違うのは、子供が育つとメスが旅立つところです。群れのうちオスは血縁があるのですが、メスは血縁がありません。血縁のあるオスの群れに、放浪してきたメスが加わるからです。そのためメスのほうが、順位争いが激しいです。遺伝的に血縁関係のあるオス同士は、誰がリーダーだろうと自分と血を分けているので争うより強力することのメリットが大きくなります。逆にメスは自分の子以外は血縁がありません。そのため皆がリーダーを目指す必要が生まれてくるのだと推測できます。
狩りは当然群れで行います。小動物なども食べますが、中心となるのは中型のシカの仲間です。アニメでリカオンさんが「オーダーきついですよ~」と言っていたのは、連携が得意な反面単独で追跡のようなのは本来の特性から離れているからもあると思います。
※参考文献
D.W.マクドナルド編集,今泉吉典監修 (1986) 『動物大百科1 食肉類』 平凡社、IUCN レッドリスト リカオン
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